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Chef's Turntable Vol.12
”クジラ荘"

連載『レコード好きだから作れる、おいしいお店』
第12回は、音楽好きのお客様を繋げるためにレコードを流す、
三軒茶屋のホットドック屋さん。

2019.05.08 food interview store

何気なく入ったレストランの店内で、もしもレコードが流れてきたら、
店主はきっと職人気質で、作る料理にも特別なこだわりがあるのだと想像してしまう。
料理とレコードって、実はよく似ているのです。どちらも好きなことを追求すること、
“DIGる(掘る)”努力が大事で、アナログな手間を必要とし、だけどその分、
人の温もりや数字では測れない魅力を得ることができるもの。
音楽と同じく食も、便利にしようとすればいくらでも便利にできるこの時代だけど、
DIGることでしか生まれない“美味しさ”がきっとあるはず。
そんな素敵な飲食店を紹介していく連載第12回目は、
音楽好きのお客様を繋げるためにレコードを流す、三軒茶屋のホットドッグ屋さん。

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小さなホットドッグ屋さんで
レコードが繋いだ、音楽好きの輪

ライブイベントで見かける
『あのホットドッグはどこの?』

 三軒茶屋に人を呼び込むデルタ地帯、「エコー仲見世商店街」。4~5坪の店が所狭しと並ぶこの通りに「クジラ荘」がオープンしたのは4年半前。一見すると小さなホットドッグ店だけれど、ロックDJイベントの礎「ロンドンナイト」の初期メンバーによるCDやレコード販売ブースを設けていたり、毎週火・水曜の夜はDJセットも出現し、コアな空間に早変わりする。
 「レコードが縁となって、音楽好きが集まるようになった」と話すのは、オーナー店主の小淵香奈さん。
 「昔からライブハウスが好きで、店舗と並行してライブイベントに出店し始めた頃、お客様でもあるチャーべ(松田 “CHABE” 岳二)さんと紗羅マリーちゃんのバンド『LEARNERS(ラーナーズ)』から声がかかり、自主企画ライブに毎回出店させていただくことに。『バンドのスタイルと、ホットドッグの相性が良い』と感じてくれたみたいです。ライブハウスでみんなが立ちながらでも食べやすいように、ハーフサイズのパンをオーダーして販売していました。ホットドッグ屋としての採算は度外視して、おもしろいと思ってもらえたらいいなと。すると、会場やSNSを通していろんな人が目にしてくれて、『あのホットドッグはどこの?』という声が、次第にアーティストさんや運営側を通して届くようになりました。ライブ出店を通して、音楽をやっている人や音楽好きのお客さんたちとの繋がりはできたけれど、その人たちに店舗にも足を運んでもらうきっかけはないか……。そんなとき、『ロンドンナイト』のDJ Katchin’(カッチン)さんから、『ターンテーブルを置いてみれば?』とアドバイスをいただき、ターンテーブルはカッチンさんから“永久レンタル”することに。普段は販売するCDなどをかけているのですが、3年ほど前から毎週火・水曜にレコードをかけるイベントがスタートしました。チャーべさんがDJをしている日に『ラーナーズ』のファンの子が来てくれたり、パンクレコードのセレクターだけのイベントがあると、『ここは大人の部室か!?』ってくらいマニアックなお客さんが集まったり(笑)。そういったご縁でお店に立ち寄ってくれる人たちが増えていって、音楽好きな人たちの輪が、レコードによって繋がれていった感じですね」

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まずは定番の「プレーンドッグ」(¥780)で、自家製ザワークラウトを味わって。(奥右手から)「ホッピー」(¥500)や「トーイン(東京飲料) 青りんごサワー」(¥500)、「コダマ バイスサワー」(¥550)など、ドリンクは全50種ほど。

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「ロンドンナイト」のDJであり、 interFMでパーソナリティも務めるカッチンさんから受け継がれたターンテーブル。

 

自家製ソーセージと
コッペパンに込められた想い

 
 もともとパン製造会社直営のカフェで働いていた小淵さん。「クジラ荘」のホットドッグは、オリジナルでオーダーしている少し甘めのコッペパンと、週2日、4~5時間かけて作る、肉汁たっぷりの自家製ソーセージが自慢だ。
 「このエリアは、夜飲む場所が多いことで有名ですが、昼間は子供やファミリーが行き交う商店街。大人の小腹を満たすだけでなく、子供にも安心して食べさせられる自家製ソーセージを、小さい頃におやつで食べていたようなコッペパンで挟んだ懐かしい日本式のホットドッグを作りたかった。グルメバーガーはあるけれど、“グルメホットドッグ”ってないじゃないですか(笑)。ソーセージがこのボリュームなので、コッペパンは潰れず、耐えられる限界の柔らかさで作ってもらっています。また、ソーセージ以外にもザワークラウトやチリソースも自家製にこだわり、“カリーブルスト”(カレー味)のケチャップはトマトから煮込んで作っています。小さな店ですが手作り感やDIYなど、音楽好きやレコード好きなお客様と相性が良いのかもしれません」
 オープン当初、今の「クジラ荘」からは想像がつかないほど内装はシンプルだったそうで、「年々、ごちゃごちゃ感が増していくけれど、海の家のようで気に入っている」と話す小淵さん。壁に隙間なく貼られたステッカーは音楽好きの輪がこの店で繋がれていった証のように感じられた。

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パイナップルの甘みとピクルスの酸味が絶妙に混じり合う「ハワイアンドッグ」(¥830)。ほかに「チリドッグ」(¥850)など、ホットドッグは常時7種類を用意。

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「昔ながらのチープなホットドッグのグルメ版が作りたくて、コッペパンもこだわった」と話す小淵さん。

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Chef’s Profile

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小淵香奈さん(オーナー)

「クジラ荘」を一人で切り盛りするオーナー兼店主。音楽好きが高じて、ライブハウスにも定期的に出店。店舗が商店街の中に位置することもあり、隣に音が響かないよう、壁を掘り返して綿を詰めたりと、創意工夫を惜しまない。

 

Favorite Records

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『フシギ”TONIGHT”』 Magic,Drums&Love

小淵さんの友人でもあるバンド「Magic,Drums&Love」のデビュー7inchアナログ・シングル。「バンド結成時から知っているので、ライブなどがどんどんカタチになって、大きくなっていく姿を見てきて、感慨深い一枚なんです」

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『Raw (Side-A) Gimme Little Sign(Side-AA)』+『FEVER CITY/FEVER VERSION』 Soulcrap

「『Soulcrap』のギターの方が当店のお客様だったり、彼らがリリースライブをしたお店が三軒茶屋でとても近かったのでお客さんたちがライブ会場とクジラ荘を行き来したりと、ご縁のあるバンドなんです」と小淵さん。

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『恋はヒートウエイヴ』 LEARNERS

「クジラ荘のお客様でもあるチャーべ(松田 “CHABE” 岳二)さんと紗羅マリーちゃんのバンド、『LEARNERS(ラーナーズ)』が、新メンバーのチエさん、Hamadaさん(QUATTRO)、TA-1さん(KONCOS)を迎えて5人バンドとして活動を開始し、初のリリースとなった7inch。いつもライブで出店していることもあり、メンバーが揃っているこのジャケットが欲しいって気持ちもあって、購入しました」

TEXT_Aki Fujii

大学時代に受けた食品官能検査で“旨み”に敏感な舌をもつことがわかり、食べ歩いて20年。出版社時代はファッション誌のグルメ担当、情報誌の編集部を経て2013年独立。現在、食をテーマに雑誌やWEBマガジンにて連載・執筆中。ヒップホップもこよなく愛し、1996年の「さんぴんキャンプ」も経験したaround40。

instagram_@akinokocafe

information

クジラ荘

 

住所_東京都世田谷区三軒茶屋2-13-10 エコー仲見世商店街

営業時間_12:00~22:00

定休日_木曜

TEL_070-3367-1113

instagram_ @kujiraso_kana