PERK

serch
スクリーンショット 2019-03-11 22.32.29

Chef's Turntable Vol.11
”organ”

連載『レコード好きだから作れる、おいしいお店』
第11回は西荻窪にあって予約が取りづらいとされる人気ビストロをご紹介。

2019.03.12 food interview store

何気なく入ったレストランの店内で、
もしもレコードが流れてきたら、店主はきっと職人気質で、
作る料理にも特別なこだわりがあるのだと想像してしまう。
料理とレコードって、実はよく似ているのです。
どちらも好きなことを追求すること、“DIGる(掘る)”
努力が大事で、アナログな手間を必要とし、
だけどその分、人の温もりや数字では測れない魅力を得ることができるもの。
音楽と同じく食も、便利にしようとすればいくらでも便利にできるこの時代だけど、
DIGることでしか生まれない“美味しさ”がきっとあるはず。
そんな素敵な飲食店を紹介していく連載第11回目は、
西荻窪にあって予約が取りづらいとされる人気ビストロ「オルガン」。

スクリーンショット 2019-03-11 22.30.26

いつも同じ味に出来上がる料理ではなく、
“一期一会”の味にこだわりたい

「mass(マス:大衆)と対極のものでありたい」。
 三軒茶屋「ウグイス」に続き、西荻窪でも人気店「オルガン」を育て上げたオーナー紺野 真さんの言葉は、一言でお店の世界観を表している。看板とも言える壁一面のワインセラーに数百本のナチュラルワインがストックされた「オルガン」の店内は、古びたミシン台がサイドテーブルのように使われ、器や本、レコードが所狭しと並ぶ。これらのほとんどは、もともと紺野さんの持ち物だったそう。
「誰もが手に入れられるものって、僕にとってはつまらない。料理や器も、もう一度作ってまったく同じに作れるようなものではなく、“一期一会”のものに愛着が湧くんです。ナチュラルワインも、農薬を使わないことで色が濁っていたり、自然のままに発酵が進むので、年によって、時には瓶ごとにだって味が違うのが魅力。現在は、世界的にもナチュラルワインがブームになって高値がつけられていますが、『ウグイス』を始めた14年前はまだ、色が濁ったりするため高級格付けワインの対極にいて、生産者がすごく真面目に作っていても評価が低かったため、ナチュラルワインの良さを広めるのが僕らの使命でした」。

スクリーンショット 2019-03-11 22.30.14

岩手県の広田湾産牡蠣とブドウ、白ワインのジュレ(¥1,500)。「オルガン」ではペアリングをするお客様が大半で、紺野さん曰く「添えられたワインと一緒に飲んでいただくことで完成する一皿」。ロワールの生産者マルク ペノの白ワインと牡蠣の相性がとてもいいことから、このワインをジュレにも使い、よりペアリングの精度を高めている。

スクリーンショット 2019-03-11 22.30.39

穴子の軽いスモーク、イカ墨のソース トリュフとキノコの香り(¥2,000)。穴子は、紺野さんが得意とする食材。朝、豊洲の市場で〆てもらうという活きのいい穴子を、骨と頭などから出汁をとって、イカ墨を加えた黒いソースでいただく。この日は長崎産の穴子。

 

料理の味を売るのではなく、
“ここで過ごす時間”を買ってもらう

 「オルガン」の椅子は一脚ごとにデザインが異なり、テーブルは8人で囲む大きな円卓から、2人向けの勉強机までさまざま。バラバラの個性が寄り添うように空間を成している。
 「お金がいくらあったとしても、全身ハイブランドで揃えることに、僕的には興味がなくて、むしろ何にも持ってない人が頑張って工夫している方が、筋肉が付くと思うんです。ここの器も、不揃いのアンティークやセカンドハンドのジャンクが混在しているのですが、とりわけ作家さんの作品は、手の風合いがあって、一つ一つ表情が違うのがいい」。
 紺野さんが、おろしたてのお皿と比較して見せてくれたお皿は、使い込まれ、角が取れて、年輪のようなテカリをもち、少し色の禿げた部分もいい味を醸している。
 「今は人気が出てしまった作家さんの作品ですが、昔からお付き合いのある方で、ご本人から『こんなに育ってくれてるんだ』と言ってもらえることも。劣化ではなく、経年変化によって傷も味わいになっていくんですよね。僕の中では全部繋がっていて、レコードも同じ。CDは録音できるレンジが決まっていて、人間の耳が反応する範囲のノイズは取り除き、綺麗な部分だけを録音するのに対して、レコードは人間が聞こえる領域以外の音まで録音されていて、ノイズも加わり、CDよりはるかに情報量が多い。レコードは聴いていくうちに擦り切れ、傷も増え続け、ノイズも追加されていくけど、完全に同じものが何万枚でもコピーできるCDと比べて、それ以上の魅力があるのではないでしょうか」。
 料理も、いつも同じ味に出来上がるようなコンビニエンスなものではなく、“一期一会”の味にこだわりたいと考える紺野さんの店には、連日、料理人やフーディーたちが集まる。
 「尖った言い方に聞こえるかもしれませんが、僕はお客様に料理の味を売っているつもりはなく、“ここで過ごす時間”を買ってもらっている”と考えています。もちろんうちの料理を楽しみにしてくださるお客様や、研究に来る同業者も多いので、料理に一切の手抜きはできない。でもこれだけ美味しいお店がたくさんある東京で、選んで来てもらうのだから、料理が美味しいのは当たり前の事。僕としては、お客さんから『これ何が入っているんですか?』と聞かれるより、『この曲、誰ですか?』と聞かれる方が断然嬉しいんです」。

スクリーンショット 2019-03-11 22.31.15

Chef’s Profile

スクリーンショット 2019-03-11 22.32.15

紺野 真さん(オーナー)

1969年、ウッドストックの年生まれの49歳。都内の飲食店勤務を経て、2005年に独立。三軒茶屋「uguisu(ウグイス)」をオープン。2011年にオーナーとして2軒目となる「organ」を西荻窪に開業。店のレコードはジャズやロックが中心だが、最近はクラシックを流すことも多いそう。

 

Chef’s Sound System

_K__8499

アンプ

「オルガン」の常連さんが自作したというアンプは、オーディオマニアの人も食いつく代物。
「秋葉原で自作スピーカーを売るお店を営んでいる福永さんという常連さんが、趣味でアンプも作っていて、自作真空管アンプのコンテストで優勝したもの。その方から「店で使って欲しい」と言われた時は、スタッフからも「そんなスペースなんてない」と反対に遭い、断っていたのですが、「一度だけ」と繋げてみたら、一瞬で音がすごく良くなって、即決しました。

_K__8456

スピーカー JBL

こちらも、アンプと同じく、常連の福永さんから託されたものだそう。
「JBLのスピーカーの中でも『ホワイトフェイス』という貴重なタイプで、こちらも福永さんから『どうせ使ってないから」と、お借りしているもの。もともとあったスピーカーと比べて、やはり音がだんぜん良くなった」

_K__8467

プレイヤー DENON

当初、紺野さんが置いていたレコードプレイヤーも「DENON」だったが、同じく、福永さんから「アンプとスピーカーに相性がいいのはこのプレイヤーかな」と言われ、一式託されたものだそう。

 

Chef’s Favorite Records

スクリーンショット 2019-03-11 22.31.29

『Settin’ The Pace』 John Coltrane

ジャズ喫茶巡りをライフワークとする紺野さんが「ジャズの聖地」とされる岩手県一関市にあるジャズ喫茶「ベイシー(BASIE)」を初めて訪れた時のこと。
「ちょっと気合いを入れすぎて、13時の開店時刻に行ってしまって(笑)、まだお客さんどころか、音もまだかけてない状態だったんですが、菅原正二さんというカリスマオーナーが『どうぞ』と席へ通してくれました。菅原さんがスピーカーのスイッチを入れると、スピーカーからボォーン!と重低音がすると同時に、店の壁が音圧でグラグラと揺れて、そこで一曲目にかけてくれたのが、この「Settin’ The Pace(ペースをセットする)」。「若造、そんなに気合い入れてくるなよ。リラックスして」って言われてるみたいでしたね(笑)。うちの店でも、「僕らスタッフのペースはどんな感じかな」という意味で、オープン1曲めにかけることが多いです」。

スクリーンショット 2019-03-11 22.31.40

『AFRICAN PIANO』 Dollar Brand

南アフリカ人ジャズ・ピアニスト、ダラー・ブランドのピアノソロ。
「ジャズ好きには有名なアルバムですが、とにかくカッコいい。ジャズはアメリカで、黒人労働者のための音楽として生まれたけど、この人は南アフリカ生まれでヨーロッパに渡ったリアルな黒人で、どこまでも深くて黒いカッコよさがある。人によっては『暗い』という人もいるのですが、僕にとっては一筋の希望の光みたいなものも感じるんです」。

スクリーンショット 2019-03-11 22.31.50

『Try(Just A Little Bit Harder)』 Janis Joplin

もともとバンド活動をし、ロックミュージシャンを志していたという紺野さん。
「根底がロック好きなので、店が盛り上がってくると、このアルバムみたいにロックな精神を持っている一枚をかけたくなる。『mass(マス:大衆)と対極のものでありたい』という想いは、“お店の存在がロックでありたい”という気持ちにも通じてますね。

スクリーンショット 2019-03-11 22.32.29

information

organ

オルガン

住所_東京都杉並区西荻南2-19-12 シーバース西萩1F

営業時間_17:00~00:00 (L.O.23:00)

定休日_月曜、第4火曜

TEL_03-5941-5388

http://cafe-uguisu.com/top.html