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her life - stella mccarthney

ステラ・マッカートニー
エシカルな信念を貫く孤高のデザイナー

2016.08.12 fashion

イギリスを代表する人気ブランドである「ステラ マッカートニー」を支えているのはサステナビリティ、動物愛護、菜食主義というストイックな信念。“親の七光り”という偏見をはねのけ、今や世界に通用する名声を手にしたステラの魅力的な半生に迫ってみよう。

常識にとらわれないひたむきな挑戦で大スターの娘から脱却

 今月号の表紙でも素敵なルックを披露してくれた『ステラ マッカートニー』は、新しいコレクションが登場するたびにファッショニスタたちの心をときめかせ、今や世の女性たちの憧れのブランドとなっている。自らの名前を冠したブランドを牽引するデザイナーの彼女が歴史に残るビッグアーティストの娘という事実はあまりにも有名だが、彼女が今日まで築き上げてきたキャリアは、そんな肩書きすら上回るほど偉大なものになりつつある。恵まれた立場に甘んじることなく強い信念のもとにクリエイティヴィティを磨き、今もなお前進を続ける彼女の軌跡とその功績について、ここで語っていきたい。
1971年のロンドン。当時すでに世界的スターの地位を築いていたビートルズのポール・マッカートニーと写真家であるリンダ・マッカートニーの次女としてステラは生まれた。幼少の頃からファッションの世界に強い憧れをもっていた彼女は、15歳で『クリスチャン ラクロワ』のインターンを経験したり、サヴィル ロウにあるテーラー『エドワード セクストン』にてテーラリングを学んだりと若くしてさまざまな経験を積む。在籍していたロンドンの名門・セントラル セント マーチンズの卒業コレクションでは、モデルにケイト・モスを起用。このときのルックにはすでにシャープなテーラリングとフェミニンなシルエットといった現在のブランドの魅力とも言うべき特徴が頭角を現しており一躍脚光を浴びる。
1997年になるとステラはカール・ラガーフェルドの後継者として『クロエ』のクリエイティブ・ディレクターに抜擢される。現在『セリーヌ』のクリエイティブ・ディレクターを務めるフィービー・フィロとはこの時期いっしょに働いていたのは有名な話。彼女とはセント マーチンズ在学中から親しい友人関係だった。
『クロエ』を退社後の2001年、ステラは自身のブランドである『ステラ マッカートニー』をスタート。さらに2004年にはスポーツパフォーマンスコレクション『アディダス バイ ステラ マッカートニー』を発表し着実にキャリアを積み重ねていく。
両親同様に厳格な菜食主義者であるステラが自身のブランドで重視したのはサステナビリティへのコミット。デザインには決してレザーやファーといった動物由来の素材を使用しないということを徹底したのだ。「リアルレザー=高級」が常識とされた当時のファッション業界で、その決断は異例中の異例。しかし彼女は動物に苦痛を与えないエコな素材を使ったバッグを発表することで、その常識がまったくの思い込みだったことを世間に示してみせた。それが現在でもベストセラーとして愛され続けているチェーンバッグ『ファラベラ』だ。ステラはブランドでリリースされているハンドバッグのすべてのライニングにリサイクルされたペットボトルを使用。2015年の秋冬コレクションでは本物と見間違えるほどクオリティの高いファー風素材のコートを登場させ話題を呼んだ。こちらのシリーズには『ファー フリー ファー』のラベルをつけて本物ではないことが一見して分かるように仕上げた。かつてカール・ラガーフェルドが語った「シックを偽る(=フェイク)ことはできないが、フェイクファーを着てシックになることはできる」という言葉があるが、彼女はそれをそのまま具現化したことになるのかもしれない。さらに生涯を通じて動物権利と動物福祉を支持する『ステラ マッカートニー』は、今年の秋には新たに展開するストアウィンドウのインスタレーションを通じて、動物愛護団体PETAと動物保護施設Battersea Dogs&Cats Homeをサポートすることを決定した。
ステラを語る上で外せないのはカメラマンであった母・リンダの存在だ。ステラがサステナビリティにこだわる生き方をしているのは菜食主義者であったリンダの影響が大きいと言えよう。リンダは1998年に惜しくも乳がんでこの世を去ったが、ステラのクリエイションには時折、母親の面影や彼女に対する愛情を色濃く感じることができる。2003年の自分の挙式では母がポールとの結婚式で着たウェディングドレスにインスパイアされてデザインした一着を着用しているし、2010年には母のレトロで愛らしいワードローブから着想を得たコレクションを発表したのだ。近年では母親を苦しめた乳がんの啓発、患者へのサポートにも強い意欲を見せている。
都会的でフェミニンなブランドイメージに隠されているのは動物愛護精神を貫く凛とした姿勢。『ステラ マッカートニー』はファッション業界の価値観を覆し、ある種の革命を起こしたともいえる勇気あるブランドなのだ。自分の軸を大事にした、たくましいステラの生き方とクリエイションは、これからもますます女性たちに自信と輝きを与えてくれるに違いない。

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才能溢れるアーティスト一家

父・ポールと母・リンダの間に次女として誕生。デザイナーとして独立してからも「ポールの娘」という肩書きばかりに注目が集まり苦悩した時期も。近年はステラのショーをフロントロウで見守る父の姿が見かけられている。姉のメアリーは料理家・写真家として、弟のジェイムスはミュージシャンとしてそれぞれ活躍中。

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クロエでの活躍が人生の転機に

クリエイティブ・ディレクターに指名されたとき、ステラはまだ25歳。もともとの『クロエ』の上品な雰囲気にロンドンらしいストリート感を取り入れることで、今までのクラシカルなイメージを一新。これによって若い女性たちに広く支持されるようになった。デザイナー時代にはマドンナのウェディングドレスも手がけた。

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エシカルな物創りへのこだわり

ブランドの代表的なバッグ『ファラベラ』の素材はポリエステルやポリウレタン。また、ナッパ風素材のコーティングの50%以上は再生可能な天然資源の植物油というこだわりぶり。製品にはできるだけオーガニックコットンを使用。生産の過程で有害な化学薬品を使わないことで、土壌保全と健全な農業をサポートしている。

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乳がん啓発への取り組み

2014年秋冬シーズンより、コレクションの一部のアイテムを乳がん意識向上キャンペーンのために特別にデザインし、その売り上げの一部を乳がんの治療・研究施設である「ザ リンダ マッカートニー センター」へ寄付している。2015年には乳がん患者が両乳房切除後に着用するためのコンプレッションブラを発売した。

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アディダスとのパートナーシップ

『アディダス バイ ステラ マッカートニー』は、今までにないファッション性と機能性を両立したハイモードなスポーツウェアということでたちまち話題になる。ステラはこのプロジェクトがきっかけとなり2012年のロンドンオリンピックおよびパラリンピックでの英国代表チームのクリエイティブ・ディレクターに就任。

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動物愛護のインスタレーションも

2016年の秋コレクションを反映して、ストアでは生意気なネコモチーフをグラフィックネオンのインスタレーションで遊び心いっぱいに表現するウィンドウディスプレーを展開。ここにはチャリティーへの寄付を呼びかけるメッセージが込められており、寄付金はイギリス国内の動物保護施設での資金として役立てられる。

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本文中に述べた「ファラベラ」と同じく、太めのチェーンがポイントになった「ベックス」は家具に使われる編み込みの職人技からインスピレーションを得たという存在感のあるデザイン。お馴染みのナッパ風素材も秋らしいカラーになって登場。もちろんレザーは使用していない。バッグ¥189,000(STELLA McCARTNEY/ステラ マッカートニー ジャパン)

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最新コレクションにも世界観がビッシリ!

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最後は今季コレクションをチェック。この冬は今までのエフォートレスなイメージはそのままに、スワンモチーフや意外性のあるレイヤードなど、ちょっぴりユニークなエッセンスを加えた印象的なコレクションに。天然のフェザーを一切使わないパファージャケット、ナッパ風素材を使ったコートといったステラのスピリットを強く感じさせるアイテムも注目を集めた。

information

ステラ・マッカートニー

ポール・マッカートニーの娘として生まれ、『クロエ』のクリエイティブ・ディレクターに。その後、自らのブランド『ステラ マッカートニー』を開始。ベジタリアンゆえ、製品には動物愛護、環境保護を徹底している。