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Chef's Turntable Vol.01
"Dandelion Chocolate"

新連載スタート!
『レコード好きだから作れる、おいしいお店』
ダンデライオン・チョコレートに行ってきました

2017.12.20 food music store

何気なく入ったレストランの店内で、もしもレコードプレイヤーから
音楽が流れていたら、そこの店主はきっと職人気質で、
作る料理にも特別なこだわりがあるのだと想像してしまう。
料理とレコードって、実はよく似ているのです。
どちらも好きなことを追求すること、つまり”DIGる(掘る)”努力が必要で、
アナログな手間を必要とし、だけどその分、
人の温もりや数字では測れない魅力を得ることができるもの。
音楽と同じく食も、便利にしようとすればいくらでも便利にできるこの時代だけど
DIGることでしか生まれない”美味しさ”がきっとあるはず。
そんな素敵な飲食店を紹介したいと思い、この連載をスタートさせました。
記念すべき第1回目は、職人気質なチョコレート屋さん、
ダンデライオン・チョコレートを紹介します!

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美味しいものを、美味しいと
感じてもらう空間までを提供する

 モノづくりのDNAが息づく街・蔵前。2016年この地にオープンした「ダンデライオン・チョコレート」は、サンフランシスコからやってきた注目の“Bean to Bar(ビーン・トゥ・バー)”。公園に向かいあうように佇む2階建ての建物では、シングルオリジンのカカオ豆の選定・仕入れ、選別から焙煎、摩砕、テンパリング、成形、包装、さらには販売まですべての工程を一貫して手がけられている。
 「シングルオリジン(単一品種)」や「焙煎」と聞いて、コーヒーのこだわりを思い浮かべるように、チョコレートにおいても、生産地や気候、収穫時期などによって異なるカカオ豆本来の個性がある。このファクトリーは、その個性を深く楽しめる場所なのです。例えば、一種類のカカオ豆に対し、焙煎の条件を変えながら何度もテイスティングを重ね、プロファイリングを行いながら、そのカカオ豆が一番美味しい状態を導き出す徹底ぶり。

 そんなこだわりの工程をすべて目の前で見ることができる1階では、カウンター横に、何気なくレコードプレイヤーが。「レコードをかけている目的の99%は、スタッフにカフェ本来の目的を思い出してもらいたいから」と語るのは、「ダンデライオン・チョコレート・ジャパン」の石渡康嗣さん。
 「日本の飲食店では、例えばバリスタなど、美味しいコーヒーを入れることだけが目的になってしまって、ずっと下を向いて熱心にコーヒーを淹れていますよね。美味しいコーヒーを入れることはとても大事ですが、それだけが目的ではない。本来の仕事は、味覚的に優れたコーヒーを提供することだけでなく、空間の中で五感に訴える最高の仕事をすることだと思います。なので必然的にスタッフ自らが、お客様にこのタイミングで聴いてほしいと思う音楽をかける、という姿勢が必要だと思うのです」。

 

レコードの音が止まる時、
お客様のことを考えるチャンス。

 また、「パソコンから流す音楽サービスのプレイリストやCDだと、ずっと流れっぱなしで意味がない」と考える石渡さん。
 「レコードはどうしても一度止まるものなので、20分に一回でも、40分に一回でも、レコードを変えるときに少しでもお客様のことを意識して、『今ならこういう曲がいいかな?』と、考えてほしい。『雨の日には…』、『混んで来たら…』とシーンに適切な音楽を選ぶことで、スタッフみんなが“お客様のための空間を作ろう”と協力的なコミュニケーションを取ることにもつながっています。別に音楽に詳しくなくてもいいので、お店にある50枚ほどのレコードの中から、『私だったらお客様のためにこの曲をかけたい』という気持ちになってくれることが大切」。
 また、最初の設計ではスペースの都合上、レコードプレイヤーはカウンターの外に置く予定だったという。
 「オペレーションのことを考えると、さすがにカウンターのすぐそばにプレイヤーが必要。なので、音響担当の方にも無理を言ってカウンターの中に変更していただきました。カフェの仕事は、ボタン1つ押せば何でもできるようにどんどん単純化しているので、アナログな作業を残す目的もあります。いろんなことがAIにとって変わられる中、人肌を感じる仕事は、とくにカフェにおいては必要だと考えます」。
 オープン当初は、針を落とすこともできなかったり、針を折ったりするスタッフが多かったけれど、今ではアクシデントにもそれぞれが対処できるようになったのだとか。
 チョコレートができるまでの工程が見えるだけでなく、人と人とのコミュニケーションも見えるお店。手から手へ、クラフト感や温かみのあるBean to Barと、レコードの相性は間違いなく良いのです。

 

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11月からスタートした、限定30食の「蔵前 シェフズ・テイスティング」¥1450と、ほうじ茶がブレンドされたことですっきりとした味わいの「クラマエ ホットチョコレート」¥630。「シェフズ・テイスティング」は、サンフランシスコでも同名のメニューは存在するが、“チョコレートを使ってクリエイションする”というフォーマットのみ揃え、蔵前では同店の辻シェフが開発した5種のカカオが食べ比べられるセットを提供。

 

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これまで他にもレコードのある店を開発・運営してきた石渡さん。「スタッフとレコードプレイヤーの距離が遠くなると、継続できないことも多かったので、無理を言ってカウンターの中に設置しました。レコード好きな人からすると『水周りにレコードを置くなんてありえない』と驚かれますが、目的は、お客さんが音楽のある空間を楽しむこと」。

 

 

Chef’s Profile

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石渡康嗣さん(「ダンデライオン・チョコレート・ジャパン」COO)。1973年京都生まれ。大学在学中に世界を放浪したのち、2002年に友人と起業。2004年「futsalcafe KEL」、10年「CAFE;HAUS」、12年「Bar Fill Up」などの大小様々なカフェ・バーの企画運営。13年「株式会社WAT」設立。茅ヶ崎「CAFE POE」、大崎「cafe & hall ours」など地域に必要なコミュニティ・カフェを運営する。自宅や事務所でもレコード派だそうで、昔CDで買っていた曲も、レコードで買い直しているそう。

 

 

Chef’s Sound System

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Turntable:YAMAHA GT-750

1985年に発売されたヴィンテージのレコードプレイヤー。GT-1000からキャビネットやモーターの一部を変更することでさらにハイC/P化を図ったレコードプレイヤー。GT-1000やGT-2000といったヤマハの銘機を総称し、今年待望の復活を遂げた「GTシリーズ」では、末弟に当たる機種として人気を博した。
石渡さん曰く「お店に置く機材や音響は、お客様の居心地が優先。たんにレコード好きの人間が選ぶよりも、機能性やデザイン性を加味して、設計者と選定しました」。

 

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Amp:6CA7(3) シングル 6ch パワーアンプ

1階にある、目線よりやや高い棚に配された真空管アンプは、ハイエンドオーディオ機器をフルオーダーメイドで製作する「小松音響研究所(Komatsu Sound Lab)」のもの。アナログならではの豊かな再現力を楽しむことができる真空管アンプを、インテリアやスペースの広さなどに合わせてハンドメイドしてもらった。

 

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Speaker:SONY SS-G7

二階の客席の壁側で対となるのは、1976年製のフロア型スピーカーシステム。「アナログの音がより温かく聞こえる」とスタッフもお気に入りだそう。3ウェイ・3スピーカー方式。

 

 

Chef’s Favorite Records

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『Seven SAMURAI』 Matt Sounds

今年1月に国内外の20店舗以上のクラフトチョコレートメーカーを集めた「Craft Chocolate Festival」というイベントを開催。このバンド「Matt Sounds」に所属する数名のアーティストの方々にオファーし、カカオ豆の産地一帯“カカオベルト”をテーマに、中南米の音楽を日本人ならではの解釈で演奏してもらったという。世界のカカオを扱っている「ダンデライオン・チョコレート」ならではのセレクトだ。

 

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『SAN FRANCISCO DUES』 CHUCK BERRY

今年3月、90歳でこの世を去ったロックンロールの創始者・チャック・ベリーの、チェスレコード復帰2作目となるアルバム。「タイトルのサンフランシスコにルーツをもち、店内の雰囲気とも相性がいいんです」とは、店舗統括マネージャーの物江徹さん。

 

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『LIVE』 DONNY HATHAWAY

ソウル・ムーブメントのアイコン、ダニー・ハサウェイ。オーディエンスとの掛け合いや臨場感を楽しめる『ライブ盤』の最高峰と言われる一枚。物江さんが「好きでかけていたら、スタッフみんながかけるようになっていた」という一枚。

 

 

about Dandelion Chocolate, Factory & Cafe Kuramae

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産地の違うカカオ豆でつくられたブラウニー3種類を食べ比べできる「ブラウニーバイトフライト」(¥630)など、ここでしか食べられない焼き菓子をはじめ、さまざまなチョコレートドリンクも常時揃える。

 

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クラフトマンシップが貫かれた商品作りの全工程を見ることができる。人材育成に関しても、「チームを作る」という目的を明確化したチームビルディング専門の担当者を一人配し、個人個人が持っている力をうまく引き出したり、間に入って上手にコミュニケーションを取っていくファシリテーションを担っているという。

 

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本国と同じカカオ豆と同じプロセスで作っていても、手作業ゆえ、必ず異なる味わいに仕上がる。チョコレートのパッケージには一つ一つ、カカオ豆毎の味を組み上げるプロファイラーの名前が印字されている。

 

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1階はチョコレートファクトリー、2階はワークショップスペースを併設したカフェ。

 

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「蔵前は、丁寧にモノづくりをする意識が見える場所で、クラフトなチョコレートメーカーが映えると感じた」とCOOの石渡さん。2階席で目の前の公園を見ながらいただくも良し、テイクアウトして公園で楽しむのも◎。

 

 

 

[注釈]今回お話を聞いた石渡康嗣さんは厳密に言うとシェフ(Chef)ではありませんが、連載のテーマ上、記事内では「Chef」という表現を使用させて頂いています。また、店内でかけるレコードの選曲は店舗スタッフに任せるという石渡さんの方針を尊重し、「Chef’s Favorite Records」は店舗統括マネージャーの物江徹さんに答えてもらいました。

 

 

 

TEXT_Aki Fujii

大学時代に受けた食品官能検査で“旨み”に敏感な舌をもつことがわかり、食べ歩いて20年。出版社時代はファッション誌のグルメ担当、情報誌の編集部を経て2013年独立。現在、食をテーマに雑誌やWEBマガジンにて連載・執筆中。ヒップホップもこよなく愛し、1996年の「さんぴんキャンプ」も経験したaround40。
https://www.instagram.com/akinokocafe/

 

 

PHOTO_Yoko Tagawa(horizont)
EDIT_Yohsuke Watanabe

information

ダンデライオン・チョコレート ファクトリー&カフェ蔵前店 

住所_東京都台東区蔵前4-14-6
営業時間_10:00~20:00
定休日_不定休
TEL_03-5833-7270