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Chef's Turntable Vol.04
”KITEN”

連載『レコード好きだから作れる、おいしいお店』
第4回は音楽レーベルも営む
駒沢の宮崎料理居酒屋を紹介!

2018.06.27 food interview magazine music store

何気なく入ったレストランの店内で、もしもレコードがあったら、
そこの店主はきっと職人気質で、作る料理にも特別なこだわりがあるのだと想像してしまう。
料理とレコードって、実はよく似ているのです。どちらも好きなことを追求すること、
“DIGる(掘る)”努力が大事で、アナログな手間を必要とし、だけどその分、
人の温もりや数字では測れない魅力を得ることができるもの。
音楽と同じく食も、便利にしようとすればいくらでも便利にできるこの時代だけど
DIGることでしか生まれない”美味しさ”がきっとあるはず。
そんな素敵な飲食店を紹介していく連載企画、第4回目となる今回は
駒沢の住宅街で異彩を放つ宮崎料理居酒屋『KITEN(キテン)』を紹介します!
(前回の記事はこちらから→http://perk-mag.com/chefsturntable_03/

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レコード棚がテーブルの脚!?
住宅街で異色の人気宮崎料理

  ボックス型のレコード収納ラックの上に丸い天板を乗せて、座敷のテーブルとして使っている居酒屋『KITEN(キテン)』。店内の至る所に90年代ヒップホップやソウル、レゲエなどのレコードが飾られ、高級住宅街・駒沢周辺では異色の様子ながら、宮崎県の地鶏と焼酎が人気の炭火焼き店です。
 オーナー兼店長の永友常義さんは95年に故Nujabes(ヌジャベス)氏が開店し、ヒップホップ・R&Bを中心に品揃えを誇った「ギネスレコード」で6年ほどスタッフとして勤務していた経歴の持ち主。いわゆる10代でDJにハマり、クラブミュージックを経てレコード一辺倒。「そもそも料理なんてまったく出来なかった」という永友さんが『KITEN』をスタートしたのは、地元の宮崎で農家を営む兄と、そこで作られる野菜や地元の食材を使って一緒に何かできないかを相談したのがきっかけだったそう。
 「立ち上げの頃は宮崎料理屋で働いていた仲間が住み込みで手伝ってくれて助けてもらいました。基本は教えてもらうメニューばかりでも、単なる真似ではなく、素材をどう生かすかは自分のフィルターを通して。ヒップホップにはサンプリングという文化があるように、宮崎料理を元ネタに、どうしたらお客さんに喜んでもらえるかを考えて自分の味を試しながら重ねていった感覚ですね」。
  例えば宮崎のソウルフード「チキン南蛮」は甘酢やタルタルソースの味付けから、卵をつけて揚げるのか? 片栗粉か小麦粉を使うか? まで、家庭によってさまざま。こうしたあらゆるサンプリングを繰り返して自慢の地鶏を一番美味しく食べられるオリジナルの調理法が生まれ、人気メニューとなったそう。
 料理経験なしでスタートしたお店は今ではスタッフも4人、地元の人に愛され、今年で9年目を迎えます。

 

ジャケ写は音とリンクする、一枚の画

 また、店と同時にレーベル『KITEN RECORDS』を立ち上げ、現在も定期的に音源製作やイベントを行っている永友さん。この連載の肝となる質問「なぜレコードがいいのか?」を尋ねると、たいていのお店の方は「今の時代に、あえて手間がかかるのがいい」と答えてくれますが、永友さんからは「すぐ針を落として聴けるのでラクだから」と意外な答えが返ってきました。
 「長い間、レコードが完全に自分のライフスタイルの一部になっているので手間に感じたことがなかった(笑)。なぜレコードをお店に置いているかをあらためて考えると、LPの大きさも含め、ジャケ写のデザインをアートとして見ているので、店内のインテリアとして”飾る”ためでもあるんです」。
 たしかに、店内に飾られている十数枚のレコードの中身は盤が入ってないものもあり、一枚の画として存在感を放つものばかり。自身のレーベル作品のジャケットもデットストックで入手した特殊紙で統一し、デザインは両面穴空きのレコードジャケット仕様というこだわりよう。
 「個人の感覚かもしれませんが、ジャケ写を見るとその収録曲が思い浮かんで、頭の中でリンクする。もともと10代の頃からDJが入り口でLPに慣れ親しんでいたので、”掘る”作業が基本にあるからでしょうか。自分がレコード屋で働いていた頃もレコードの棚を一枚一枚掘っていく流れでジャケ写を見るとパッとその音にリンクするのがクセになっているんですね」。
 現在は座敷席を利用するお子さん連れのお客様も多いため、針を懸念して店にターンテーブルを置かずデジタルで音を流しているそうですが、飾られているジャケ写が定期的に変わっていることからも、店主のレコード愛を窺い知ることができます。

 

料理2

「宮崎地鶏の炭火焼」。永友さん曰く、「実家の庭で、父親が鶏を丸一羽さばいて、炭で焼いてくれてたのがルーツ」だそうで、「KITEN」の看板メニュー。

 

料理5

タルタルソースの中に入っている野菜や、その刻み方まで研究された「チキン南蛮」。甘酢がマイルドに効いていて、地鶏焼と並ぶ人気メニュー。

 

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宮崎産の地酒を中心に、焼酎は20-30種類を常備。なかでも、永友さんのオススメは、西都市の酒蔵が造る「正春」と「逢初」。

 

 

Chef’s Profile

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永友常義さん。1982年、宮崎県西都市生まれ。渋谷にあった「ギネスレコード」で6年ほどスタッフとして勤務後、2009年、駒沢に宮崎料理居酒屋「KITEN」をオープン。2010年、仲間とレーベル「KITEN RECORDS」を立ち上げる。DJ Tsu名義でも数々のイベントでプレイ中。「いいよ、いいよ」という宮崎弁を冠した「icchaga night(イッチャガナイト)」は渋谷Rootsで隔月開催中。http://www.kiten-records.com/

 

 

Chef’s Sound System

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Amp:KENWOOD”KAF-5002″

頭上の棚に置いているアンプは、kitenでは2台目。90年代後半のKENWOODのKAF-5002は、TRAITRを採用したK’sシリーズのプリメインアンプ。。

 

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Speaker:Taguchi “CUBE130 SERIES”

Taguchiのスピーカーは、いただきもの。現在はデジタルで音を流すが、温かみのある音が流れるので気に入っているそう。

 

 

Chef’s Favorite Records

ヒップホップのプロデューサー兼アーティストのマッドリブや、名門「Alpha Boys School」のバンドマスターのレニー・ヒバート、それにジャマイカのトロンボーニストであるヴィン・ゴードンのプレイを全面的にフィーチャーしたインスト・レゲエなど、ブラックミュージックへの愛を感じる素敵なセレクトになっています。

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『Shades Of Blue』 Madlib

ヒップホップのプロデューサー兼アーティストのマッドリブがブルーノート・レーベルから全音源を預けられ、新たな視点から再構築したリミックス集。「両親ともにジャズのアーティストで、きっと小さい頃からジャズに触れ合っていたんだろうなとイメージしながら聴いています。マッドリブが作る曲はどれも魅力的で、他のアルバムも聴いていますが、このアルバムは特に好き。自分でDJをやるときも頻繁に登場する一枚です」

 

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『More Creation』 Lennie Hibbert

多くのレゲエミュージシャンを輩出した名門「Alpha Boys School」のバンド・マスター、レニー・ヒバートの代表作。「レゲエとジャズの融合バランスが最高で、子供と過ごす時間にも、ドライブのときにも、晴れた日にも雨の日にも、いろんなシチュエーションにハマるアルバムです」。

 

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『Musical Bones 』 Lee Perry & The Upsetters

ジャマイカのトロンボーニストであるヴィン・ゴードンのプレイを、全面的にフィーチャーしたインスト・レゲエ。「昔から好きなトロンボーンの音がメチャクチャかっこよくて、夏はずっと聴いている一枚。一定のリズムで楽器のようなライミングをするラップを好きな感覚とも似ていますね」

 

 

 

TEXT_Aki Fujii

大学時代に受けた食品官能検査で“旨み”に敏感な舌をもつことがわかり、食べ歩いて20年。出版社時代はファッション誌のグルメ担当、情報誌の編集部を経て2013年独立。現在、食をテーマに雑誌やWEBマガジンにて連載・執筆中。ヒップホップもこよなく愛し、1996年の「さんぴんキャンプ」も経験したaround40。
https://www.instagram.com/akinokocafe/

 

 

PHOTO_Yoko Tagawa(horizont)
EDIT_Yohsuke Watanabe

information

キテン

住所_東京都目黒区東が丘2-13-31

営業時間_17:00~24:00(L.O.23:00)

定休日_無休

TEL_03-6313-9042

URL_https://www.facebook.com/kitenkiten/