PERK

serch
555

Chef's Turntable Vol.03
"PATH"

連載『レコード好きだから作れる、おいしいお店』
第3回は富ヶ谷の人気レストランを紹介!

2018.06.15 food interview magazine

何気なく入ったレストランの店内で、もしもレコードプレイヤーから音楽が流れていたら、
そこの店主はきっと職人気質で、作る料理にも特別なこだわりがあるのだと想像してしまう。
料理とレコードって、実はよく似ているのです。どちらも好きなことを追求すること、
“DIGる(掘る)”努力が大事で、アナログな手間を必要とし、だけどその分、
人の温もりや数字では測れない魅力を得ることができるもの。
音楽と同じく食も、便利にしようとすればいくらでも便利にできるこの時代だけど
DIGることでしか生まれない”美味しさ”がきっとあるはず。
そんな素敵な飲食店を紹介していく連載企画、第3回目となる今回は
代々木八幡の人気レストラン『PATH(パス)』を紹介します!
(前回の記事はこちらから→http://perk-mag.com/chefsturntable_02/

_YT_3817本番

2つの人気店に置かれた
二個一のターンテーブル

 フレンチの名店「キュイジーヌ[s]ミッシェル・トロワグロ」で働いていた元同僚、シェフの原太一氏とパティシエの後藤裕一氏が立ち上げたレストラン『PATH(パス)』。「代々木八幡の人の流れを変えた」ともいわれる人気店は、渋谷にあるビストロ『Rojiura(ロジウラ)』の姉妹店でもあり、2つのお店には本来、二個一で使われていたターンテーブルが1台ずつ置かれています。これは2店のオーナーシェフである原さんが機材として使っていたターンテーブル。
 「音楽はパンクが入り口で、高校の時からレコード屋さんには通っていました。ときどきDJもやりながら、ダンスミュージック、ヒップホップ、ジャズ…と通ってきましたが、大学卒業後、フレンチの世界に入ってからはいったんレコードを買うのは封印。勤めている頃は朝から晩まで時間もなく、音楽はCDで聴くのみ。レコードに費やす余裕を持てませんでした。その間、ターンテーブルは実家の倉庫に預けていたのですが、親が処分しそうになった時も『将来使うから』と残してもらっていたもの」。

 

ルーツを知ることで解釈し、
新しい料理を生み出す

 「いつか自分の店を持ったら絶対にレコードを置く」と決めていた原さん。数年前にパスで食事をしていると、料理を作る原さんが忙しい合間にオープンキッチンから出て、わざわざレコードを変える姿に驚かされました。
 「もともとアナログ感のあるものが好きで、DIYとか人の手がかかるものに良さを感じるので、レコードを変えるときに手間と感じたことはありません。昔からヴィンテージ家具も好きでパスに置いているスピーカーは僕が幼稚園の頃から実家にあったもの。自分の店を持ちたいと思ったのは、内装やインテリアも好きだし、音楽や洋服も好きだし、全部突き詰めてやるには…、という発想からでした。ただ、こういうお店にしたい、と理想のカタチに寄せたり真似するのではなく、自分の中にもともとあるものをカタチにしていかないと絶対に歪みが生まれてしまうと思うんです」。
 原さんがこう話す通り、パスは料理のスタイルから音楽、インテリアまで、随所に原さんのセンスが表現されていて、ライフスタイルのあるレストランとして人気を博しています。
 「例えばパンクというと、みんながセックス・ピストルズみたいな格好をして、モヒカンで鋲ジャンで…みたいなイメージがありますよね? でも僕が高校生の頃に読んだジョニー・ロットン(セックス・ピストルズのボーカル)のコメントでは『ピストルズのファッションを真似してるヤツなんてパンクじゃねー。みんなが思い思いの格好をして、”誰っぽくもない”奴らが集まり、でも社会への不満だけは持ってる、それが本当のパンクなんだ』って。この言葉は、長年自分の中にも生きていて、人気店だからといって、なんでもかんでも真似したり、流行りの盛り付けとかはやりたくない。良いと思う部分があったら自分らしく取り入れて、誰かの料理っぽくならないように、自分の中で解釈することを意識しています。そのためには世界中の料理のトレンドも単に情報として知るだけでなく、本質やルーツを知ることで自分なりに解釈ができる。どこのお店でこのブームが起きたのか? どんな料理人が生み出したのか? とルーツを探ったりするのは、レコードを掘るのと同じ感覚ですね」。
 今回撮影した自家製ハムは、ハム=保存食という根本の解釈を変えて、保存のためでなく、おいしいハムを作ることにこだわってカタチにしたものだそう。フレッシュな肉質まで愉しめるハムは原さんならではの解釈から生まれた、新鮮なおいしさです。

 

_YT_3804本番

オープン当時から変わらぬ「自家製ハムとクミン」¥780、「トレビスとキヌア、ザクロのサラダ」¥980。カフェの料理価格で質の高い食事が楽しめる。100本以上を揃えるワインはすべてナチュール。

 

IMG_3796

コースは¥5,800(税抜)のみ。コースの中から、ある日の一品「鯖ジャガイモ、緑トマト」。

 

 

Chef’s Profile

hara profile

原太一さん。1981年、東京都生まれ。2011年に渋谷区宇田川町に「Rojiura」をオープンし、5年連続でミシュラン「ビブグルマン」にノミネートされる。今回紹介した「パス」は15年にパティシエの後藤シェフと共同でオープン。

 

 

Chef’s Sound System

_YT_3770本番

Turntable:SL-1200MK3D

ハタチぐらいの時にDJ用で買ったというテクニクスのターンテーブルは、ここ「PATH」に一台、姉妹店「Rojiura」に対となる一台がおかれている。「実家の倉庫で長らく埃をかぶっていたのですが、親に『将来使うから捨てないで!』と残してもらってました」。

 

_YT_3782本番

Amp:

真空管アンプは、小松音響のオーダーメイド。「音はもちろん、職人感や手作り感があって、お店に合うと感じました。見た目もかわいくて気に入ってます」。

 

_YT_3759本番

Speaker:1″

実家で使っていたというスピーカーは、アルテックの「LANSING」 。「僕が幼稚園の頃にはもうリビングに置かれていた記憶が残ってます。なんとなくヴィンテージっぽい雰囲気のものが好きなので、いつかこれを使おうと思っていました」。

 

 

Chef’s Favorite Records

昨年公開されたデヴィッド・リンチ監督によるドラマ『ツイン・ピークス The Return』に起用されたことでも話題のクロマティクスや、コスモ・パイクやロイル・カーナーなどロンドンの現行インディーズシーンの注目株をチョイス。

_YT_3809本番

『Kill For Love』(2012) CHROMATICS

「音が気持ち良くて、PATHでも頻繁にかけている一枚。クロマティクスはPVもめちゃめちゃカッコイイアーティストで、他のアルバムも買っています。これは『ツインピークス』の最新作で、デビッドリンチ監督がオファーしたことでも話題ですね」。

 

_YT_3806本番

『JUST COSMO』(2017) Cosmo Pyke

 

_YT_3810本番

『Yesterday’s Gone』(2017) Loyle Carner

「昨年、ロンドンのインディーズシーンにどハマりしていたときに、コスモ・パイクを調べていたら、ロイル・カーナーにたどり着いて、さらに掘ってくと、キング・クルールとは同級生だったり。お店を調べるときなどに『あのレストランに行ってる人は、あそこのレストランにも行っているんだ』と知って、辿っていく感覚にも近いと思います」。

 

 

 

TEXT_Aki Fujii

大学時代に受けた食品官能検査で“旨み”に敏感な舌をもつことがわかり、食べ歩いて20年。出版社時代はファッション誌のグルメ担当、情報誌の編集部を経て2013年独立。現在、食をテーマに雑誌やWEBマガジンにて連載・執筆中。ヒップホップもこよなく愛し、1996年の「さんぴんキャンプ」も経験したaround40。
https://www.instagram.com/akinokocafe/

 

 

PHOTO_Yoko Tagawa(horizont)
EDIT_Yohsuke Watanabe

information

パス

住所_東京都渋谷区富ヶ谷1-44-2 A-FLAT 1F

営業時間_[BREAKFAST] 8:00~15:00(L.O.14:00)、[DINNER] 18:00~24:00(L.O.23:00)

定休日_[BREAKFAST]月曜・第2第4火曜、[DINNER]月曜・第2第4日曜

TEL_03-6407-0011

URL_http://www.instagram.com/path_restaurant